中央大学音楽研究会混声合唱団
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曲目解説

メサイアの作曲者ヘンデル

「昔の巨匠の中で、ヘンデルとバッハのみが天才であった。」
ベートーヴェンはこのような言葉を残しています。 バロック時代を代表する音楽家である二人は、日本でも音楽の父バッハ、音楽の母ヘンデルと呼ばれています。 しかし、学校の音楽の授業などで必ずと言っていいほど取り上げられるバッハに対して、ヘンデルは名前以外が私たちの耳に入ることは少ないように感じます。 あの有名な表彰式の音楽をヘンデルが作曲したことはあまり知られていない事実でしょう。
今から300年ほど前、ヘンデルの名前はヨーロッパ中で知れ渡っていました。 彼は当時バッハを遥かに凌ぐ名声をもつ音楽家であり、ドイツからイギリスに帰化し、様々な国で活躍する国際人であり、自分のオペラ劇場を経営する実業家でもありました。 そしてベートーベンが残した言葉から分かるように、次世代の音楽家の目標となる人物でした。
今日演奏するメサイアはヘンデルの最も有名な曲の一つです。 心を揺さぶる劇的な演出、親しみやすいメロディーといったこの曲の魅力からヘンデルの一面が見えてきます。

救世主の物語

メサイア(Messiah)はヘブライ語「メシア」の英語読みで、「救世主」を意味します。
紀元前600年頃、ユダ王国に住んでいたユダヤ人たちはバビロニアに敗れ、奴隷として囚われていました。 苦しい日々を送る人々に、神との契約を守り続ければ救世主が現れるという預言が与えられます。 預言は旧約聖書に書き残され、語り継がれていきます。
その何百年も後に生まれたイエスは、旧約聖書に書かれた預言を次々に実現させました。 彼こそは長い間人々に待ち望まれた救世主だったのです。
台本作者チャールズ・ジェネンズは旧約聖書と新約聖書の言葉を抜粋・再編してテキストとしました。 イエスの生まれる前に書かれた預言と、彼が成した奇跡を織り交ぜながら、聖書に描かれるありのままの「救世主」の姿を語ります。
本作では、三部構成のそれぞれが数曲ずつのまとまりとなって救世主イエスの姿を描き出しています。 ここでは各部のストーリーを紹介します。

〈第一部 預言と降誕〉

つらく厳しい日々を過ごすユダヤの民に、突然、主がバビロニアからの解放と救世主の到来を告げます。 その到来の日に備え、谷は高く、山は低くなれと命じ、すべての物の平等を促します。 また、救世主の前には信仰の厚いレビの一族しか立てないと告げ、信仰の重要さを強調しました。

そして、一人の女性マリアに天使から受胎が告げられ、救世主となる男の子、イエスが生まれます。 その知らせは今まで人々が歩んでいた闇を照らす希望の光となり、各地に喜びをもたらしました。

イエスは目や耳が不自由な人々を治すなどの奇跡を起こしながら、自らの教えを広めていきます。 彼の教えは人々に安らぎを与えるものでした。

物語の幕開け ――序曲の描写

ユダヤ人が奴隷として生活した苦しみ、そしてこれから迎えるイエスの受難を表現した重々しい序曲によって、「メサイア」は幕を開けます。
この苦しみに救いの光が差し込み、序曲が終わると、優しく透き通った音楽にのせてユダヤの民に苦難の終わりが告げられ、救世主の預言が与えられます。

イエスの教え

当時、ユダヤ教が厳しい律法で人々を縛っていたのに対し、「隣人を愛しなさい」「人を裁いてはならない」というイエスの教えは不条理なく易しいものでした。
曲中に現れる「くびき」という言葉は本来、束縛の象徴で、ここではイエスの約束を示します。 彼のくびきは自由を奪うのではなく、人々を苦しみから解放しました。

〈第二部 受難と復活〉

イエスは生まれたときから人々の罪を背負って死なねばならない運命にありました。
彼は人々に侮辱され傷付けられても、それを受け入れ、救済をもたらすために一人で悲しみや痛みを負いました。 ついに彼は捕えられ十字架刑に処されます。 すべての人の罪を、イエスは死をもってあがなったのです。

しかし、主はこの死者の魂を見捨てることなく、復活のための城門が開かれイエスは再び現世に舞い戻り、そして天へと昇っていきました。

その後、主が与えたイエスの救いの福音(よい知らせ)は、弟子たちにより世界中に広められます。 異教徒たちはその教えを弾圧しようとしますが、愚かな企みは主の前に打ち砕かれます。 こうして栄光の国が訪れ、主の永遠の統治が賛美されるのです。

イエスの受難

神の創造した最初の人間アダムとイブは神の言いつけに背き、互いに罪を押し付け合い、悔い改めることをしませんでした。 この原罪のため、すべての人は生まれながらにして罪をもつ存在となり、神の恵みを受けられなくなります。 神の赦しを得るため、この世に送られたイエスは自らが犠牲になることにより人の罪を償いました。
本作は、第一部が喜びや栄光を歌う一方で、第二部では救世主の到来に歓喜していた民衆が手の平を返したようにイエスを苦しませた愚かさ、そして罪のすべてをイエスに負わせてしまった悲しみが描写されています。

復活、そしてハレルヤコーラスへ

イエスの復活は力強い合唱で幕を開けます。 今までの暗い雰囲気をかき消すような明るい曲が続き、栄光の訪れを賛美するハレルヤコーラスが第二部の終曲を飾ります。
ハレルヤ(Hallelujah)は「神を讃えよ」という意味で、当時演奏中にイギリス王ジョージ二世が思わず立ち上がったなどの逸話も残る曲です。

〈第三部 永遠の命〉

イエスは罪を負って死に、そして復活しました。彼は「死」に打ち勝った存在として、永遠の命を得たのです。 キリスト教の教えは、いつか訪れる最後の審判の日にラッパが鳴り響くと、信じる者は永遠の命を得ることを説きます。 その教えを確信した者は恐れるものはなく、信仰が揺るぎないということを語り、人々を救った救世主イエスを賛美するのです。

最後の審判

第三部は第一部、第二部における出来事を受けて「永遠の命」への信仰を語る部分です。 アダムとイブは罪を犯し、神の恩恵を失ったために人には死が与えられました。 そしてこの罪を償ったイエスは初めて死に打ち勝った存在となりました。第三部では世界が終末を迎える日にキリストが再臨してすべての死者を蘇らせ、永遠の命を得る者と地獄に墜ちる者を分ける審判を行う教えが述べられます。

殆どのテキストが新約聖書からの抜粋である第三部は、本作の結論であるといえるでしょう。 第一部と第二部では旧約聖書に書かれた救世主の預言がイエスにより実現されていくという構図をとっています。 旧約聖書の言葉が実現された後に歌われる第三部は今日の私たちに伝える新約聖書の預言と呼べるのかもしれません。


※以上の内容は、演奏会当日にお配りいたしますパンフレットにも掲載されています。

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